経験を「手抜き」ではなく「新たな挑戦」へ。
福井県鯖江市・末広漆器製作所が考える『初心忘るべからず』の本質
こんにちは。福井県鯖江市河和田地区で、ホテルや旅館、外食産業向けの業務用漆器の製造・販売および修理加工を行っております、株式会社末広漆器製作所の代表、市橋です。
日々仕事に向き合う中で、ふと思い返す言葉があります。それは「初心忘るべからず」という言葉です。
伝統工芸である越前漆器の産地・河和田の将来を考えたとき、私たち職人や企業が生き残り、次世代へバトンを繋ぐためには、この「初心」の本当の意味を理解し、体現し続ける必要があると強く感じています。今回は、私が考える初心の本質と、産地の未来に向けた当社の挑戦についてお話しさせていただきます。
■ この記事のポイント(約300文字)
- 初心の本質は「謙虚さ」: 「知らない・できない」からこそ教えを乞う素直さが原点。経験による「慣れ」が「横着」に変わることを戒める必要があります。
- 経験は「挑戦」に使うべき: 長年培った知識や技術は、都合のいい「手抜き」のためではなく、常に「新しい挑戦」へ活かすべきです。
- 挑戦が謙虚さのバロメーター: 新しい事に取り組んでいるかどうかが、初心を保てているかの物差しになります。
- 末広漆器製作所の覚悟: 越前漆器の産地・河和田の未来を憂うからこそ、厳しい指摘にも素直に耳を傾け、業務用漆器の修理や新技術などの新たな価値創造に挑み続けます。
初心とは何か? それは「教えてもらう」という謙虚さ
皆さんは「初心」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
私は、初心とは「謙虚さ」そのものであると考えています。
駆け出しの頃は、右も左もわからない、自分には技術がないという自覚があります。だからこそ、先輩やお客様から「教えてもらう」という素直な謙虚さを持っています。しかし、年月が経ち経験を積むにつれて、いつの間にかその謙虚さが失われ、仕事への「慣れ」が「横着」へと変質してしまうことが多々あります。
この横着は非常に恐ろしいものです。なぜなら、横着は次の段階として「サボり」を生み、さらなる成長への「努力の妨げ」となってしまうからです。伝統工芸の世界においても、「今までこうやってきたから」という慣れにあぐらをかいてしまえば、そこから先の技術の進歩やお客様への価値提供は完全にストップしてしまいます。
積み重ねた経験は「手抜き」ではなく「新しい挑戦」へ活かす
長く仕事を続けていれば、当然ながら豊かな経験や知識、そして高度な技術が身につきます。問題は、その手に入れた武器を「何に使うか」です。
身につけた技術を使って「いかに楽をして仕事を終わらせるか」という、都合のいい手抜き(横着)に活かしてしまうのか。それとも、「この技術を応用して、次はどんな新しい価値を生み出せるか」という「新しい挑戦」に活かすのか。ここで、職人として、そして企業としての真価が問われます。
ただ、自分が横着になっているのか、正当な効率化を図っているのか、その判断は案外難しいものです。そこで私が一つの「物差し(基準)」としているのが、「今、自分は新しい事に挑戦しているか否か」ということです。挑戦を避けている時は、大抵において慣れによる横着が顔を出している時だと自戒しています。

産地の将来を憂うからこそ、ご指摘に素直に耳を傾ける
今、私たちが根を下ろす福井県鯖江市河和田の越前漆器産地は、ライフスタイルの変化や後継者不足など、大きな転換期を迎えています。産地の将来を憂う声を耳にすることも少なくありません。
産地が生き残り、再び輝くためにはどうすれば良いのか。それは、私たち作り手が過去の栄光や経験というプライドを捨て、再び「初心」に立ち返ることです。
お客様から時代のニーズ(例えば「食洗機で洗える丈夫な漆器が欲しい」「古くなった器を修理してSDGsに貢献したい」など)を突きつけられた時。あるいは、自らの至らなさを指摘・叱責された時。
「伝統とはこういうものだ」と自分の非をすり替えて反発していないか。
初心の頃に教えを乞うた時のように、素直にその言葉を受け止めようとしているか。
これからの時代に選ばれるのは、指摘を真摯に受け止め、新しい技術(GFC加工やUV印刷など)や、サステナブルな「器の修理加工」といった新しい取り組みに、謙虚に挑戦し続ける産地であり、会社であると確信しています。
おわりに:常々「初心」で居続けるための決意
「初心忘るべからず」。
言うは易く行うは難しですが、私は代表として、常々この初心でい続けなければと日々反省を繰り返しています。
末広漆器製作所は、これまで培ってきた越前漆器の技術と知識を「都合のいい手抜き」には決して使いません。ホテル・旅館・飲食店などのお客様の課題解決という「新しい挑戦」のために、惜しみなく注ぎ込んでまいります。
現状に満足することなく、謙虚な姿勢でモノづくりに向き合い続ける当社の取り組みに、ぜひご期待ください。業務用漆器の新規製作、器の修理・再生加工など、どんな些細なことでも構いません。「こんなことはできないか?」という皆様からのご要望・ご指導を、心よりお待ち申し上げております。
※業務用漆器のご相談や修理のお見積りなど、お気軽にご連絡ください。