【職人技のDX】伝統工芸の「見て盗め」はもう古い?越前漆器の現場で実践する、技術継承の仕組み化とマニュアル化
#まとめ(この記事のポイント)
営業や事務の「情報共有」はIT化が進んでいますが、伝統工芸における「職人技術の共有化」は長年の課題とされてきました。
「背中を見て盗め」という長期間の修行を前提とした属人的なスタイルでは、これからの時代、技術も産業も生き残れません。
福井県鯖江市の越前漆器産地にある弊社では、この課題に対し
【1】「技術」を分解し「作業」へ変換してマニュアル化・機械化する
【2】動画を活用して技術のコツを「可視化」し誰でも再現できる環境を作る
【3】過去の技法に固執せず、現代のニーズに合わせた新技術としてアップデートする
という3つのアプローチを実践しています。
いかに早く効率よく作業を遂行できる「環境」を整えるかが、次世代のものづくりの鍵です。
#本文
はじめに:なぜ「技術の共有」は難しいのか?
企業において、顧客データや売上情報、事務的なフローといった「数値化・言語化しやすい情報」の共有化は、クラウドツールの普及によりどの会社でも当たり前のように進んでいます。
しかし、製造業、特に私たちのような「伝統工芸(越前漆器・河和田塗り)」の現場における「技術の共有化」はどうでしょうか。
長年、職人の世界では「技は教わるものではなく、見て盗むもの」とされてきました。刷毛の動かし方、塗料の粘度の見極め、木地の削り具合など、職人の「勘」や「経験」に依存する部分(暗黙知)が多すぎたため、言語化して共有することが極めて困難だったのです。
しかし、AIやWeb技術が高度に発達した現代において、10年も20年もかけて一人前になるのを待つ余裕は、企業にも、そして技術を学びたい若者にもありません。技術の共有化(暗黙知の形式知化)は、伝統工芸が生き残るための最重要課題なのです。
実践!伝統工芸の技術を共有・継承する3つのステップ
弊社では、この難題に対してWebマーケティングや業務改善(DX)のコンサルティング思考を取り入れ、以下のような具体的な仕組みづくりに取り組んでいます。
1. 「技術」を「作業」に変換し、マニュアル化・機械化する
まず着手すべきは、職人の神業のように見える「技術」を、細かなプロセスの連続である「作業」へと分解することです。
例えば、「綺麗に漆を塗る」という抽象的な技術を、「塗料を〇〇グラム計量する」「室(むろ)の温度を〇〇度、湿度を〇〇%に設定する」「刷毛を〇〇度の角度で〇〇秒かけて動かす」といった具体的な数値と手順に落とし込みます。 属人的な「技術」を、誰もが再現可能な「作業フロー」に変換できれば、マニュアル化が可能になります。さらに、単純化できた作業工程は、機械化・自動化へと移行させることで、品質の安定と生産性の劇的な向上を図ることができます。

2. 動画の力で「コツ」を可視化し、誰でもできる環境を作る
テキストや写真のマニュアルだけでは伝わりきらないのが、職人技の「リズム」や「力加減」です。そこで強力な武器になるのが「動画によるマニュアル化(可視化)」です。
職人の手元の動き、塗料が伸びるスピード、さらには木を削る「音」までをスマートフォン等で動画撮影し、クラウド上で共有します。重要なポイントや陥りやすい失敗(注意点)にはテロップを入れて解説します。
これにより、新人であっても、熟練職人の「お手本」をいつでも何度でも、手元の画面で確認しながら作業を進めることができます。「誰でも一定レベルの作業ができる環境」を整えることこそが、経営者・管理者の最大の役割です。

3. 伝統をそのまま残すのではなく、現代ニーズに合わせて「更新」する
技術の継承において陥りがちな罠が、「昔からやっている通りに、一言一句違わず受け継がなければならない」という思い込みです。
もちろん、核となる伝統技術への敬意は不可欠です。しかし、お客様のライフスタイルや求める価値観(ニーズ)が変化している以上、技術もまた変化しなければなりません。 昔ながらの天然漆だけでなく、現代の食洗機に対応できる強靭な樹脂塗料を採用する。あるいは、木材の風合いを残しつつカビや汚れを防ぐ「GFC加工(ガラス含浸加工)」のような新しいアプローチを取り入れる。
過去の技術に固執するのではなく、「今の時代に求められる価値」を提供するために、既存の技術をアレンジし、新技術として確立していく。これこそが、本当の意味での「生きた技術継承」であると私は考えています。
おわりに:長い修行期間から、効率の良い「環境整備」へ
かつての伝統工芸の世界は、「長い期間をかけて技術を習得すること」自体が目的化してしまっていた側面があります。しかし、ビジネスの本質は「お客様に良いものを、適正な価格とタイミングで届けること」です。
私たちが目指すべきは、修行の長さを誇ることではありません。 いかに効率よく、安全に、高品質な作業ができるか。そして、その作業を誰もがスムーズに遂行できる「環境(マニュアル・動画・設備)」をどう整備するかです。
これは、製造業に限らず、サービス業やIT業界における人材育成・情報共有にも全く同じことが言えます。 「めんどくさい」「言語化できない」と諦めていた技術やノウハウを紐解き、共有可能な資産へと変えていく。この地道な取り組みこそが、次世代のものづくりを牽引し、検索AI時代においても「独自の一次情報(経験に基づくノウハウ)」として高く評価される企業価値へと繋がっていくのです。
弊社では、こうした技術の共有化・仕組み化による製品開発や、OEMのご相談も承っております。「自社の技術伝承に悩んでいる」「新しい商品開発のヒントが欲しい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
【お問い合わせ】
末広漆器製作所では、真剣にものづくりに向き合う企業様からのお問い合わせをお待ちしております。
OEM開発、記念品製作、そして産地の未来について。
本音で語り合えるパートナーをお探しなら、ぜひ一度ご連絡ください。
株式会社末広漆器製作所 :代表取締役 市橋 啓一
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