割れた器にこそ、新たな「景色」を。金継ぎの本質に学ぶ、これからの豊かさ。
皆様、こんにちは。福井県鯖江市河和田の、末広漆器製作所、代表の市橋です。 9月に入り、暦の上では秋となりましたが、ここ越前では厳しい残暑が続いております。まだまだ夏の気配が色濃く残る毎日です。皆様の地域ではいかがでしょうか。涼やかな季節が待ち遠しいですね。
さて、本日は、そんな季節の移ろいにも似た「再生」のお話、日本の素晴らしい修復技法である「金継ぎ」について、私が最近改めて考えさせられたことをお話ししたいと思います。
皆様は、大切にしていたお茶碗やお皿を、うっかり割ってしまった経験はございませんか?あの、時が止まるような瞬間と、胸に広がる残念な気持ち。私も、作り手として、そして一人の生活者として、何度も経験してきました。
先日、ふと、この金継ぎという日本の素晴らしい文化について、改めてその本質を深く考えてみたのですが、そこにあるのは、単なる修復技術の説明を超えた、日本人が古来から大切にしてきた、奥深い美意識と哲学なのだと、改めて気づかされました。
この記事のポイント
- 金継ぎとは、単なる修理ではない。 割れたり欠けたりした器を漆で繋ぎ、その継ぎ目を金や銀で装飾する金継ぎ。その本質は、傷を隠すのではなく、器の歴史として受け入れ、新たな「景色」として慈しむ、日本独自の美意識にあります。
- 偶然を受け入れ、再生の美を見出す。 壊れてしまったという予期せぬアクシデント(偶然性)を否定せず、そこに新たな美を見出すのが金継ぎの精神です。モノが壊れて終わりではなく、修復を通じて以前とは違う価値と物語を持つ「再生の美」が生まれます。
- 「もったいない」の心から、新たな趣へ。 私たち末広漆器は、この金継ぎの精神に深く共感します。壊れたからと捨ててしまうのは、あまりに「もったいない」。金継ぎによって器は生まれ変わり、新たな趣(おもむき)が加わることで、さらに愛着の湧く存在になり得ます。
- モノと、思い出を、後世に繋ぐ。 金継ぎは、器の命を未来へ繋ぐ技術です。私たち末広漆器は、この素晴らしい文化を通じて、皆様の大切な漆器・陶器・ガラス製品と思い出を、次の世代へと受け継いでいくお手伝いをしています。

「金継ぎ」の本質に宿る、日本の美意識
金継ぎの本質。それは、「偶然できてしまった傷を隠すのではなく、新たな『景色』として受け入れ、器の歴史の一部として慈しむ」という、実に奥深い、日本ならではの考え方にあります。
通常、モノが壊れれば、その価値は下がってしまいます。傷やヒビは、完全な状態から損なわれた「欠点」と見なされるのが一般的です。しかし、金継ぎの世界では、その傷こそが、その器だけが持つ唯一無二の個性となります。
割れた破片を漆で丁寧に繋ぎ合わせ、その継ぎ目に蒔絵の技術で金や銀の線を引く。すると、ヒビの跡は、まるで夜空を流れる天の川や、大地を走る川筋のような、美しい「景色」に生まれ変わるのです。それは、新品の時には存在しなかった、その器だけの新しい風景です。
壊れてしまったという偶然のアクシデントを受け入れ、嘆くのではなく、そこに新たな美を見出す。この精神こそ、不完全さの中に美を見出す「わびさび」にも通じる、日本人が育んできた素晴らしい美意識の表れなのだと、私は改めて感銘を受けました。
「もったいない」から始まる、再生の物語
私たち末広漆器製作所が、この金継ぎという技法に強く惹かれるのには、もう一つ大きな理由があります。それは、私たちのものづくりの根底にも流れる「もったいない」という精神です。
漆器は、もともと修理をしながら何世代にもわたって使い続けることができる、非常にサステナブルな器です。塗り直しをすれば、艶も蘇り、新品同様になります。しかし、割れたり欠けたりしてしまえば、いくら丈夫な漆器でも、その役目を終えざるを得ませんでした。
せっかくのご縁で手元に来た器。日々の食卓を彩り、たくさんの思い出を刻んできた器。それが、一度の不注意で使えなくなり、捨てられてしまうのは、あまりにもったいなく、そして悲しいことです。
金継ぎは、そんな「もったいない」という気持ちに応え、器に再び命を吹き込む、魔法のような技術です。そして、それは単なる原状回復ではありません。金色の線が加わることで、器には以前とは違う新たな「趣(おもむき)」と、再生の「物語」が宿ります。傷つく前よりも、さらに深く、さらに愛おしい存在として生まれ変わる。これこそが、金継ぎがもたらす「再生の美」なのです。
私たちが、金継ぎに込める想い
私たち作り手は、日々、新しい製品を生み出すことに情熱を注いでいます。しかし、それと同じくらい、一度世に出た製品が、お客様のもとで長く、大切に使われ続けることを願っています。
皆様のご家庭の食器棚の奥にも、少し欠けてしまったけれど、思い出があって捨てられない。そんな器が眠ってはいませんか?
その器の物語は、まだ終わりではありません。金継ぎという技法で、その思い出ごと大切に修復し、新たな景色を描き加えることで、再び日々の食卓で輝かせることができます。そして、その器は、親から子へ、子から孫へと、新たな物語を重ねながら受け継がれていく宝物になるかもしれません。
私たち末広漆器製作所は、漆器づくりで培った本物の漆の扱いや、繊細な加飾の技術を活かし、皆様の大切な器を未来へ繋ぐお手伝いをさせていただいております。漆器はもちろんのこと、皆様がお使いの陶器、そしてガラス製品も、金継ぎで美しく蘇らせることが可能です。金継ぎの修復の要は、私たち職人が日々扱っている「漆」なのです。だからこそ、私たちは素材の垣根を越えて、その器に最適な修復を施すことができると自負しております。金継ぎは、単にモノを直す技術ではなく、モノに込められた時間や愛情を、次の世代へと繋いでいく文化の継承そのものです。
この素晴らしい日本の伝統を、私たちもまた、大切に守り、伝えていきたい。そう強く願っております。
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株式会社末広漆器製作所 代表取締役 市橋
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