モノを作るだけでは、もう生き残れない。越前漆器産地から目指す、次世代メーカーの「2つの条件」

「モノが作れる」だけで生き残れるか? 産地の危機と、メーカーが果たすべき2つの使命。

皆様、こんにちは。福井県鯖江市河和田の、末広漆器製作所、代表の市橋です。 2025年も残すところあとわずかとなりました。寒さが厳しくなるにつれ、漆が乾くスピードも変化するため、職人たちは温度と湿度の管理に一層神経を研ぎ澄ませる毎日です。

さて、本日は一年の締めくくりとして、改めて私たち「メーカー(製造業)」のあり方、そして役割について、自戒を込めてお話しさせていただきたいと思います。

「メーカーなんだから、モノを作るのは当たり前でしょう?」 

そう思われるかもしれません。しかし今、この「当たり前」が崩壊しつつあるのが、私たち伝統工芸産地の偽らざる現実なのです。その上で、私は声を大にして言いたい。これからのメーカーは、単にモノを作るだけでは足りない。「モノを創造する力」を持たなければ、未来はないのだと。

この記事のポイント

  • 「納期未定」という異常事態: 陶器や漆器業界では今、人手不足や設備の老朽化により「いつ納品できるか分からない」という事態が多発しています。モノが作れてこその産地なのに、その供給責任が疎かになっている現実に、強い危機感を抱いています。
  • メーカーの第一の使命「安定供給」: 大前提として、高いクオリティの製品を、約束通りにお客様にお届けすること。これができなければ、メーカーとしての信頼はゼロに等しい。私たちは内製化を進め、この基盤を死守します。
  • メーカーの第二の使命「創造する力」: 作るだけでは不十分です。新しいデザイン、カラー、スタイルを生み出す「創造力(クリエイティビティ)」こそが、お客様に選ばれる理由になります。
  • 疲弊する現場を超えて: 日々の生産に追われ、創造が後回しになりがちな現状ですが、私たちは「安定供給」と「新しい価値の創造」。この2つを両立させることで、産地の未来を切り拓いていきます。

「いつ届くか分からない」…産地で起きている異常事態

お客様から、こんなお嘆きの声を耳にすることが増えました。 

「注文した器が、半年経っても届かないんです」 

「いつ納品されるか聞いても、『未定』と言われてしまって…」

納期未定

これは、漆器業界だけでなく、陶器や他の伝統工芸業界でも頻発している現象です。 背景にあるのは、深刻な人手不足、職人の高齢化による生産力の低下、そして修理できないまま騙し騙し使っている機械の老朽化など、複合的な要因です。

しかし、お客様=使い手からすれば、それは作り手の事情に過ぎません。 お店をオープンしたいのに器が間に合わない。ギフトシーズンに商品がない。これではビジネスになりません。「モノが作れてこその産地」であるはずなのに、その最も基本的な供給責任が果たせなくなっている。私は、この現状を産地全体の危機として重く受け止めています。

メーカーの役割①:クオリティを保ち、安定供給する「責任」

だからこそ、私たち末広漆器製作所が、メーカーとして何よりも優先すべき第一の役割。 

それは、「確かなクオリティの製品を、安定して供給し続けること」です。

当たり前のことですが、この当たり前が最も難しい時代になりました。 これまでこのブログでもお伝えしてきた「内製化への挑戦」や「機械化の推進」は、すべてこの「安定供給」を守るための布石です。職人がいなくなるなら自分たちで育てる。機械が古いなら新しい技術を導入する。

「末広漆器に頼めば、ちゃんと届く」。 

供給

この安心感こそが、今の時代において最強の付加価値の一つになりつつあります。私たちは、お客様のビジネス計画を狂わせない、信頼できるパートナーであり続けたいと考えています。

メーカーの役割②:市場を切り拓く「創造する力」

しかし、「安定して作れる」だけでは、生き残ることはできません。 メーカーが果たすべきもう一つの、そして未来を決定づける重要な役割。 それが、「モノを創造する力」です。

過去の売れ筋商品を、ただ淡々と作り続けるだけでは、いずれ市場から飽きられ、淘汰されてしまいます。時代は常に変化し、食生活も、住空間も、人々の美意識も変わっています。

  • 現代のインテリアに合う、新しいカラーリングの提案
  • 使い勝手を追求した、これまでにないスタイルの器
  • 異素材と組み合わせた、斬新なデザイン

こうした「新しいモノ」を生み出す力こそが、お客様に「次はどんな商品が出るんだろう」という期待感を抱かせ、新しい市場を切り拓く鍵となります。

「言われた通りのモノを作る」のは下請けです。 「市場に新しい価値を問いかけるモノを創る」のが、メーカーです。 私たちは、常に後者でありたいと願っています。

製造力

「日々の生産」に埋没せず、未来を創れるか

とはいえ、現実は甘くありません。 多くの現場では、人手不足の中、今日出荷する分を作るだけで精一杯。「日々の生産に追われて疲弊し、新しいモノを生み出す余裕なんてない」というのが、産地の偽らざる本音かもしれません。

しかし、そこで思考停止してしまっては、ジリ貧になるだけです。 忙しいからこそ、知恵を絞る。効率化できるところは機械に任せ、人間は人間にしかできない「創造」にエネルギーを注ぐ。そうやって歯を食いしばってでも変革しなければ、産地が「新しいカタチ」で生まれ変わることはできません。

2つの鍵を手にして、私たちは進む

「揺るぎない安定供給」と「革新的な創造力」

この2つは、車の両輪のようなものです。どちらが欠けても、メーカーとして前に進むことはできません。 私たち末広漆器製作所は、この困難な時代にあっても、この2つの役割を全うし、お客様にとって「なくてはならない存在」を目指し続けます。

もし、今の仕入れ先や、産地の現状に不安をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、私たちにお声がけください。安定したモノづくりと、ワクワクするような新しい提案で、皆様のビジネスを全力でサポートさせていただきます。

2026年も、末広漆器の挑戦にご期待ください。


【お問い合わせ】

末広漆器製作所では、真剣にものづくりに向き合う企業様からのお問い合わせをお待ちしております。 OEM開発、記念品製作、そして産地の未来について。 本音で語り合えるパートナーをお探しなら、ぜひ一度ご連絡ください。

株式会社末広漆器製作所 :代表取締役 市橋 啓一

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公式ウェブサイト:https://suehiro-shikki.com/

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