漆器で培った「塗る技術」の新たな挑戦 – ガラス、陶器、そして未来へ

皆様、こんにちは。株式会社末広漆器製作所の市橋です。いつも弊社の活動にご関心をお寄せいただき、心より感謝申し上げます。ここ越前では、本格的な梅雨入りはまだ少し先のようですが、ここのところはっきりしないお天気が続き、空も心なしか重く感じられる日が多いですね。皆様のお住まいの地域ではいかがでしょうか。 さて、そんな雲間の晴れ間を心待ちにするような日々ではございますが、工場の中は変わることなく、職人たちが黙々と、しかし内に秘めた情熱を込めてものづくりに励んでおります。
さて、本日は、私たちが長年漆器づくりで培ってきた「塗る技術」を、どのように他の分野へと展開し、新たな可能性を模索してきたか、そしてこれからどこへ向かおうとしているのか、その道のりについてお話しさせていただきたいと思います。これは、私たちにとって大きな挑戦であり、試行錯誤の連続でしたが、同時に多くの発見と喜びに満ちた旅でもありました。
この記事のポイント(約300字)
- 漆器の枠を超えて: 私たち末広漆器は、伝統的な漆器製作で追求してきた「美しく塗る」「斬新な表現を施す」という技術を、もっと多様な分野で活かせないかと考え、新たな挑戦を始めました。
- ガラス・陶器への挑戦と「耐久性」という壁: まずはガラスや陶器といった異素材への塗装からスタート。しかし、そこには「耐久性」という大きな課題がありました。お客様に長く安心してお使いいただくため、10年以上に及ぶ検証を重ね、ようやく商品化に至りました。
- 「塗る」から「加飾」へ、そして海外へ: 現在では、単に塗るだけでなく、絵付けなどの「加飾」によって製品の付加価値を高める取り組みも進めています。こうした努力が実を結び、私たちの製品は海外のお客様にもお使いいただけるようになりました。今後はさらに異なる分野や異業種との協業も視野に入れ、塗る技術の可能性を追求していきます。

始まりは、漆器への想いと新たな可能性への気づき
私たち株式会社末広漆器製作所は、創業以来、越前漆器の伝統を受け継ぎながら、「いかに美しく、いかに斬新なものを生み出すか」というテーマに真摯に向き合ってまいりました。漆という素材が持つ独特の艶や深み、そしてそれを最大限に引き出すための「塗る技術」。それは、私たちの誇りであり、ものづくりの根幹です。
何層にも塗り重ねることで生まれる堅牢さ、呂色仕上げ(ろいろしあげ)による鏡のような光沢、蒔絵や沈金といった加飾の繊細な美しさ。これらを実現するためには、ミリ単位以下の精度が求められる気の遠くなるような作業と、長年の経験に裏打ちされた職人の勘が必要不可欠です。
しかし、ある時から私はこう考えるようになりました。「この漆器で培った高度な『塗る技術』や『美意識』を、もっと他の分野へも展開していけないだろうか」と。漆器という限られた領域の中で技術を深めることはもちろん重要ですが、その技術の可能性を広げることで、新たな価値を生み出し、より多くの人々に感動を届けられるのではないか。そしてそれは、ひいては越前漆器という産地全体の活性化や、伝統技術の新たな継承の形にも繋がるのではないか、と考えたのです。

未知への挑戦:ガラス・陶器への展開と「耐久性」という大きな壁
その想いを胸に、私たちがまず着手したのは、ガラス製品や陶器といった、漆器とは全く異なる素材への塗装でした。漆器で培ったノウハウがどこまで通用するのか、最初は手探りの状態からのスタートです。塗料の選定、下地処理、乾燥方法など、一つひとつが新たな挑戦でした。
特に大きな壁として立ちはだかったのが、「耐久性」の問題です。漆器は元来、非常に丈夫なものですが、ガラスや陶器といった異素材に塗料を定着させ、かつ日常使いに耐えうる強度を持たせることは、想像以上に困難な道のりでした。塗膜が剥がれやすい、傷がつきやすい、洗浄に弱い…。試作を繰り返しては、様々なテストを行いました。
何よりも大切にしたのは、「お客様に実際に使っていただき、その声を聞くこと」でした。私たちの工場内でのテストだけでは、実際の使用環境における課題は見えてきません。そこで、試作品を実際に使っていただき、その耐久性や使い勝手について、率直なご意見をいただくという検証を、根気強く、本当に根気強く重ねました。お客様からの厳しいご指摘に、何度も改良を重ねる日々。この実使用による耐久性の検証には、実に10年以上の歳月を要しました。 長い道のりでしたが、この時間があったからこそ、自信を持ってお届けできる品質に辿り着けたのだと確信しています。
努力の結晶:商品化から海外へ、そして「加飾」という新たな価値の創造
その長い検証期間を経て、ようやく私たちはガラスや陶器に美しく、かつ堅牢な塗装を施した製品を商品化することができました。それは、まるで漆器のような深みのある風合いを持ちながらも、ガラスの透明感や陶器の温かみといった、それぞれの素材の魅力を併せ持つ、新しいタイプのテーブルウェアです。
これらの製品は、国内のお客様はもちろんのこと、今では海外の展示会などを通じて、世界各国のお客様にもご愛用いただけるようになりました。日本の伝統技術に根差した私たちのものづくりが、国境を越えて評価されたことは、大きな喜びであり、これまでの苦労が報われた瞬間でもありました。
そして現在、私たちは「塗る」技術をさらに進化させ、そこに「絵をつける」、つまり「加飾」を施すことによって、製品の付加価値をより一層高める取り組みにも力を入れています。
漆器で培ってきた蒔絵や手描きの技術を応用し、ガラスや陶器の表面に繊細で美しい模様を描き出す。これにより、製品は単なる「器」としてだけでなく、空間を彩る「アートピース」としての魅力も纏うようになります。
この加飾への挑戦は、職人の新たな技術習得やモチベーション向上にも繋がり、工場全体に活気をもたらしてくれています。

未来へ向けて:「塗る」技術の無限の可能性を信じて
漆器から始まり、ガラス、陶器へと展開してきた私たちの「塗る技術」。そして、そこから派生した「加飾」の技術。これらの挑戦を通じて、私たちは改めて、伝統技術が持つ可能性の大きさを実感しています。
今後は、これらの分野での取り組みをさらに深めていくことはもちろん、もっと違う分野や、これまで想像もしなかったような異業種とのコラボレーションにも積極的に挑戦していきたいと考えています。例えば、建材、インテリア、アクセサリー、あるいは工業製品の一部など、「塗る」ことで新たな価値を生み出せる領域は、まだまだ無限に広がっているはずです。
私たちのこの挑戦が、越前漆器という産地に新たな風を吹き込み、伝統技術に新たな光を当てる一助となれば、これ以上の喜びはありません。これからも、私たちは「塗る」という行為の奥深さと可能性を信じ、たゆまぬ努力と挑戦を続けてまいります。
私たちの製品や取り組みにご興味をお持ちいただけましたら幸いです。
株式会社末広漆器製作所 代表取締役 市橋
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